音符と休符の連なりの間に

 最終巻。もう少し色々な面子の先が見たいような気もするけれど、のだめを中心にするのならここで終わりなのだろう。だって、彼女がきちんと音楽と向かい合う決断をしてしまえば、また勝手に突き進んでいくのだろうから。

 のだめが自作曲を弾いてからベートーヴェンピアノソナタ第31番を演奏するシーンがある。ここは千秋にとっての転換点のひとつになるのだが、ここを読むと、演奏家ってどういう存在なんだろう、と思う。
 音楽のことは全く知らない。ただ、偉大な作曲家の作った音楽は、何百年も演奏され続けることは知っている。では、演奏家とは、その何百年もの間の瞬間瞬間で、元の音楽を再現するだけの演奏機械に過ぎないのだろうか?もしそうだとすれば、蓄音機やテープレコーダーやCDなどが発明された時点で、完璧な録音を一度すれば、もはや演奏家はいらないことになってしまう。しかし、実際はそうなっていないのだから、やはり演奏家には何らかの価値が存在しているのは間違いない。
 のだめが即興曲を自由気ままに演奏していた時には納得していた千秋も、楽譜に沿った音を響かせ始めた時には未練を振り切れなくなってしまった。このとき千秋が音符と休符の連なりの間に感じた、のだめが曲に持たせた価値とは何だったのだろうか?

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