オルクの作った街の光と影

 秋永壱里調停員の不在が協会内で噂にのぼりはじめ、稲朽深弦の調停員としての立場もいよいよ危うくなってきた。当然、深弦は自分の調停員としてのポジションを確立するため、調停実績を積もうと奔走するのだが、その様子を見るセシルは、彼女の姿勢に危うさを感じる。オルクたちのために尽くすことではなく、実績を積むことが優先されてしまっているのではないかと。
 セシルの意見に感情的には反発しながらも、彼女の正しさを本質では理解してしまっている深弦は、自己嫌悪と迷いに陥るばかり。そんな状態の深弦の前に謎の少年が現れ、彼女に一つの問題を出していく。果たして深弦は正しい答えにたどり着くことが出来るのか?

 目の前のことだけに囚われすぎると、本来ならば目的を達成するための手段に過ぎないことが、まるで目的のように勘違いしてしまうこともしばしばある。それを見切って、本末転倒にならないように出来るか。口で言うのは簡単だが、なかなか難しいことだと思う。

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鳥羽徹作品の書評