2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

復讐は誰のために

日本鯨軍の旅順総攻撃。全滅覚悟の突撃なのだけれど、戦争の描写がメインになることはない。なぜなら、クニの仇打ちとその後の方が雪平にとっては、多分、大事だから。与えられた任務をきっちりこなした後は、鳥雷一本だけを武器として、仇の襲撃鯱に決戦を…

技術的興味だけで暴走する女子高生

25年くらい未来の世界。成績は優秀だけれどトラブルばかり起こす女子高生三人組が所属する天文部に、15年前に墜ちた無人戦闘機のAIを復元する依頼が来る。目的は、老い先短い老人が戦争で子供たちを奪われた恨みを晴らすため、所属不明機を首都上空に飛ばし…

揺らぐ良守、迫り来る災い

神佑地襲撃事件の黒幕が明らかになる。烏森は、外部からの圧力と内部の変化により板挟み状態の様相を呈していて、墨村良守に対する周囲の期待は徐々に増すばかり。しかし本人はそんなことを気にもせず、氷浦蒼士の心配をしている。 裏会の総帥は何を考えて行…

ただ決まっていることをなぞるだけなら、人間が悩む必要なんてない

黒い幽霊が前面に出てきてからは少し控えていたパンドラが戦線に復帰。チルドレンが相手にしなければならない連中が一気に増えます。今までは皆本v.s.兵部の構図が多かったけれど、この巻ではバベルのエスパーv.s.パンドラのエスパーという構図が描かれます…

勝つためには何が必要かを考えて準備する

全編、ラカン(とカゲタロー)との決勝戦。間に亜子やトサカとの回想シーンを挟んで、前半戦と後半戦に分かれます。前半ではネギのアーティファクトの能力が明らかになり、後半では詰将棋の様な戦闘シーンが見られます。つまり、その場その場で臨機応変に対…

わずか二週間での急成長

まるまる一冊フロリダ編。最先端のテニスとの方法論の違いに戸惑いながらも、自分流のやり方を貫いて、一歩一歩地道に成長していく丸尾栄一郎。この成長のための伏線も日本にいた時から張られているので突飛な感じがせず、地に足がついているという印象があ…

人工衛星に愛着がわいてくる

2009年9月18日、宇宙ステーション補給機(HTV)は国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングを成功させた。 ISSの実験モジュール「きぼう」に設置された反射板にレーザーを照射し、その瞬きで位置を確認しながら、花びらが地表に舞い落ちるよりもゆっくりと…

謎がいっぱい、というか、何が謎なのかもまだよく分からない

セナーセー市がついに臨時総督に叛旗を翻すも、軍警の圧倒的物量の前に敗北してしまう。地下に潜って革命活動を続けるアクリラ、カドム、エランカは、ラゴスやイサリの助けを借り、その他の市を巻き込みつつ、軍警の内部分裂、そして臨時総督の捕縛を目指す…

与えられた条件の中で、人々は懸命に生き抜こうとする

拡散時代を迎えた地球人類は、数多くの移民船を他の恒星系に向かって送り出した。多くの植民船は無事に植民星に到着し、そのテクノロジーを生かして繁栄し再び植民船を送り出すようになる。 しかし、植民星メニー・メニー・シープに到着したシェパード号は、…

世界の理が否定したとしても、それだけでは諦められない

浮遊大陸オービエ・クレア。その下に広がるのは穢歌の庭と呼ばれる領域で、そこに住む幽幻種から大陸を守るため、氷結鏡界という結界が、皇妃と巫女たちによって張られている。 シェルティス・マグナ・イールという少年は、かつては氷結鏡界と巫女たちを守る…

それ自体に意味はなく、それが引き起こす行動に意味がある

見かけは三人称の文体なのだが、実際は浅井ケイと春埼美空、二人の高校生の視点で交互に語られている。 二人が住む咲良田は、一見するとただの沿岸の地方都市。ただ一点、住民の半数以上が超能力者だということを除くならば。そして、浅井ケイは全ての記憶を…

ありきたりな言葉だけど、道具に罪はなく、常に使う側に問題がある。

いくつかの秘密は暴露され、でも新たな謎も登場する展開。こう言ってしまうと何だけど、詳しい内容は読むべし。 ところで、大気制御衛星暴走事件前の地球連合は、意外に政策決定機関としてきちんと機能していたらしいことが分かる。エネルギー分配問題の解決…

魔法士も怖いけれど人間も怖い

一般の人から見た魔法士の姿とか、研究者の世界観とか、色々と新たな視点が出てきました。 転送システムの作動で北極上空の大気制御衛星にとばされたメンバーと、地上施設に住む老人たちに拘束されたメンバー、そして各陣営に散らばるメンバー。シティの思惑…

北極に全員集合

残された手がかりをもとに、情報制御理論の謎を求めて北極まで来たヘイズとクレアは、そこでシンガポール・シティが大規模軍事演習を行っているのを知る。その背後には、天樹真昼たち、賢人会議が関わっていた。 自らの統治空域で軍事演習をかまされ、ロンド…

私は道を示さない、可能性を残すだけだ

アニル・ジュレがマザーシステムへと向かう姿は、さながら、ゴルゴダの丘に向かって歩くイエスの様だ。それによってもたらされるものが、完全な救いではなく、自ら悔い改め行動するための猶予を与えるだけ、というのも似ている気がする。 アニルは、おそらく…

思っていることはとりあえず言っちゃおう

フィアを護る天樹錬が、なりゆきで、マザーコア推進派のアニル・ジュレ主席執政官を護衛することになり、つまりは天樹真昼とも敵の立場になってしまう。マザーシステムの真相を市民に公開しようとする勢力とそれを阻止しようとする勢力、魔法士と人間、それ…

ちょっといい話(ビジネス編)

第109話は最上の休日編。だが、一人で休日を過ごす話ではない。最上の良さは他人とのコミュニケーションの中に見えるものだから、一人で過ごす姿は、あまり想像できなかったのでしょうね。もしあの悲劇がなければ、自分の子供にあんな話をする日が来たのでし…

畳の上に飛び散る汗の価値を知る

競技かるたは正月の新聞やテレビのニュースくらいでしか知らないし、小倉百人一首にしてもせいぜい十首知っているかというところ。"ちはやふる"と言えばどちらかというと落語をイメージしてしまうボクだけれど、この作品は面白い。 面白いという感情は、自分…

生かす命、生かされる命。殺すもの、殺されるもの。

天樹真昼とサクラにより全てのシティの住民に知らされた、マザーコアの秘密。その影響により市民の間に不協和音が聞こえ始めた頃、賢人会議は次の一手を打つべく、ニューデリーに向かう。 その情報を聞きつけたモスクワとマサチューセッツは、イルとクレアを…

数字にすると見えてくるもの、数字にすると隠れてしまうもの

政治や経済の世界では、しばしば、人間を数字として扱う。出生率に始まって、就学率、1人当たりGDP、失業率に平均寿命、戦争が始まれば損耗率なんて数字でも表される。これは政治や経済が、「なんとな〜く、しあわせ」という感覚的なものではなく、「○○政策…

だって休み時間は暇だし

そうそう。休み時間なんて、寝ているか、ぼーっと空を見ているか、トイレ行くくらいしかやることないし。そんな、友達が少ないことを自認する人たちが、友達が少ない事で憐れまれないようにかりそめの友達となって、本当の友達を作るために必要そうな活動を…

どの視点に立つかという、ただそれだけの違いなのに

天城錬たちが世界樹の事件に巻き込まれている頃、天城月夜・真昼の姉弟は、メルボルンで賢人会議の魔法士サクラと出会っていた。サクラという名前に過去の記憶を呼び起こされた真昼は、不確定要素が多い状況にもかかわらず、積極的に事件に係わることにする…

大きな力は一気に何かを救えるかも知れないけれど、その反動もまた大きい。

少し、科学者たちの視点からの世界が見えてきました。基本的に自分の好奇心を満たすことを行動原理とする科学者であっても、同じ世界に生きる人間である限り、世界に対して全く無関心ではいられない姿。魔法士とは違って物理的に大きな力が揮えるわけでも何…

出会いだす実力者たち

これまで各巻で登場した魔法士たちが出会い始めます。便利屋の天城錬とフィアが潜入した遺棄プラントで二人を攻撃してきた人形使いエドワード・ザイン。フィアの働きで和解したところに、ロンドン・シティの依頼を受けてエドを捕縛に来た、ヘイズとHunter Pi…

子孫を残すのは生命に許された奇跡

魔法士には、人間として生まれたあとに改造されてなる後天的魔法士と、生れ落ちたときからI-ブレインを備えている先天的魔法士がいるらしい。今回のお話は、同じ先天的魔法士でも、研究者の手により人工的に作られた少年ディーと、魔法士の母親から生まれた…

最後の一瞬まで足掻き続ける

神戸シティ崩壊から3ヵ月後、大戦のゴタゴタで忘れ去られていた空中研究施設に潜入したフリーの魔法士ヴァーミリオン・CD・ヘイズは、龍使いと呼ばれる少年少女の魔法士たちに見つかってしまう。彼らは大戦が勃発したことも知らず、ただ自分達だけで暮らして…

知らないことも幸せの一つの形かも

サイバーグ、ウィッテンの名前を見ると素粒子物理学を思い出すが、これらは作中の情報制御理論という架空理論に関係している。 この理論によると全ての物質は情報と等価であり、『情報の海』にある情報構造体と時空の物質が対応していて、どちらか一方を操作…

親の呪縛から逃れられない子供たち

世界を創った道具とされる創成の書。神々の争いによりそれは地上にばらまかれる。その断片は、セプターと呼ばれる人間の能力者によって使用され、セプターはそれをすべて集めて望み通りの世界を作るため、争いを繰り返す。まるで神々の争いの火種が地に広ま…

一番すごいのは恭じいちゃん

時系列的には既刊の「ハイスクール☆アドベンチャー」より少し前、響子ちゃんがフランス滞在中の恭助に会いに行くお話です。真衛門の城がある陽炎村で起こる、かつての領主の亡霊が村人に恐怖を巻き起こし、紆余曲折の末に恭助が解決します。ミステリーなので…

元気な女子中学生がひと暴れ

虹北学園に入学した中学一年生岩崎マインが、文芸部を復興させるために1ヶ月間で仲間4人を集めるために奮闘する、というお話。 やる気と本気だけは人一倍、という感じのマインが、小説を書きたい、と思っている一年生を探し出して勧誘していくのだけれど、そ…