もう一人の当事者の物語

 テラノ・ユイガと小日向祭が出会い、互いの秘密を共有する関係となった出来事の中で、ユイガがレベル4のIPI配信者であるがゆえに犠牲になった少女が一人いた。自殺未遂をしてしまった彼女の名は羽田夕菜。
 これまでの、なるべく人と距離をとる姿勢から自分を変えるために、まずは夕菜と仲直りをしようとするユイガだったが、彼女の友人たちにそれを妨げられてしまう。だが、そんな夕菜から、祭あてに一通の手紙が届く。

 一方、ユイガになるべく普通の学園生活を送らせつつ、他の生徒への影響を最小限にとどめるため、七種一葉を中心とする祭の友人たちは、色々と画策を開始する。しかしその過程の中でひとつの疑惑が浮かび上がり始め、彼女たちの日常を壊しかねない事態に繋がっていくのだった。

 1巻出の出来事の事後談でもあり、その時にあった事件の真相を明らかにもする物語となっている。社会を取り巻く情勢と、一人の少女に課せられた運命とも呼ぶべき条件にがんじがらめにされながらも、その中で少しでも良い環境を作り出そうと努力する少年と少女たちがいる。
 その結末は必ずしも幸せと言えないかも知れないが、許される状況の中で最善を尽くした結果であるとは言えよう。

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里田和登作品の書評