2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

静かに始まるクーデター

母親を生き返らせようとして自分たちの体を失った錬金術師の少年、エドワードとアルフォンスが、自分たちの体を取り戻すため、賢者の石を求めて旅に出る、というのが物語の始まりだったのだけれど、賢者の石の製法に関する秘密を知り、それと国軍の関わりを…

小説スパイラル 推理の絆 (2) 鋼鉄番長の密室

「スパイラル〜推理の絆〜」のオリジナル小説第2弾。第1弾は最強の剣士から論理を駆使して一本を取る、という展開だったけれど、今回はかつて日本に生息していたという番長という生き物にまつわる事件を扱うという、もっとありえない展開。でも、馬鹿馬鹿し…

名探偵に薔薇を

アニメ化もされた「スパイラル〜推理の絆〜」の原作者である城平京氏のデビュー作。ボクは敬虔なミステリーファンではないのでよく知らないけれど、ノックスの十戒でタブーとされている、未知の毒薬を使用した殺人が起きるミステリー。ここで使用されるロジ…

まわりだす世界

最近は携帯電話のサービスにもあるので一般化した感があるけれど、この作品が連載開始された当時はそれほど一般的な用語でもなかったコンシェルジュ。高級ホテルにあって、宿泊客に対して現地の隠れた情報への扉を開ける鍵として機能する人々で、客からの要…

磁力と重力の発見 (3) 近代の始まり (山本義隆)

発見に至る長き道のり 大航海時代を経て、ついに磁力と重力の発見の時を迎える第3巻。 この「力の発見」という言葉に疑問を感じる方もいるかもしれない。力は日常で感じられるものなのだから、改めて発見するものでもないだろう、と。しかし、この日常の力に…

欲望に潜むもの

第138回直木賞受賞作家である桜庭一樹氏が元々、いわゆるライトノベルというジャンルで作品を発表していたことは周知の事実です。最近は、純文学志向の私小説的な作品を発表することが多く、あまりライトノベルのジャンルでは活動していないように見えますが…

磁力と重力の発見 (2) ルネサンス (山本義隆)

神から自然へ 第2巻では、ルネサンスの前期と後期における”魔術”の変遷と磁力の関係についてふれられている。 ルネサンス期に生じた学問の変化の理由として挙げられているのが、印刷術の普及と大航海時代である。前者は利潤追求の観点から、それまでの学術言…

磁力と重力の発見 (1) 古代・中世 (山本義隆)

神の御許で 本シリーズは、物理学史でほとんど省みられることがなかったという中世ヨーロッパの磁力観について、数々の文献による根拠を挙げながら、当時の思想的・歴史的背景を交えて解説している。第1巻では、古代ギリシャの近接作用とみなした磁力の思想…

C.M.B.森羅博物館の事件目録 (9) (加藤元浩)

価値とは 14歳でありながら考古学に深い造詣を持つゆえに高校に編入した榊森羅と、その学園の理事長の孫である七瀬立樹の二人の周りで起きる事件を描いた作品。作者の他作品である「Q.E.D.-証明終了-」と世界がリンクしており、そちらの主人公である燈馬想は…

Q.E.D.-証明終了- (31) (加藤元浩)

自分を縛るもの MITを卒業して日本の高校に入学し直した燈馬想という少年と、高校の同級生であり父親が警察官でもある活動系少女、水原可奈の二人を中心に、日常で巻き込まれる事件や、燈馬の友人から持ち込まれる事件などを解決するお話。 かなりの頻度で、…

傷つきながらも進んで行かなければならない

目標を見失ったため、負けが混み始めてしまった桐山零。しかし、高橋勇介、ひなたやモモ、そして二階堂晴信との関わりから、再び目標を見出す。しかしその直後、彼の前に幸田香子が現れる。特別な感情を抱く彼女からの悪魔のささやき。そして彼は、盤上だけ…

大江くんの周辺で起きる変化

高校の書道部という、イメージからするとあまりアクティブではない部活にスポットを当てた作品。作者は過去に、「モンキーターン」で競艇を取り上げた河合克敏氏。 書道部に入部した帰国子女である大江縁と、高校女子柔道界の期待の星である望月結希が出会い…

偶然の出会いがなければ今頃

「ハチミツとクローバー」で美大生の姿を描いた羽海野チカが今度描くのは、将棋のプロ棋士。交通事故で家族を亡くし、生きるために将棋を選んだ高校生、桐山零。もう何もなくさないように、全てを手放して生きようとしているように見える彼だが、偶然や将棋…

ゲームの経験をリアルに生かす

超一流のギャルゲーマーであり、リアルを徹底的に否定する高校生である桂木桂馬が、ダメ悪魔エルシィの仕事である駆け魂狩りを手伝わされるお話。駆け魂というのは地獄から逃げ出した悪魔で、人間の心の隙間に潜んで力を蓄えるため、これを追い出すためには…

とにかく分厚い、でも文章は明快で読みやすい

原著を三分割した翻訳版であり、ミクロ経済学は二分冊目、マクロ経済学は三分冊目になっている。一分冊目は入門経済学なのだが、その内容は二、三分冊目にもだいたい埋め込まれているため、必ずしも読まなければならないということはないと感じた。ただし、…

良心的な訳本

パンを生産して消費するという、家計と企業のみのもっとも単純な経済モデルから始まり、閉鎖経済、開放経済と、順々にパラメーターを増やしながら、財政や金融の何をどう変えると経済のどこがどのように変化するのかを、グラフを多用しながら説明している。…

厳然たるルールが冷徹にも要求する対価

第14回ファンタジア長編小説大賞〈大賞〉受賞作である「12月のベロニカ」で眠れる少女とそれを護る騎士の姿を描いた作者による作品である。 魔族と呼ばれる、一千年前からこの世界に出現した、強力な力を持ち人間を捕食する知性体と、それらを撃滅しこの世界…

引き継がれているものは…

人間の寿命が延びたといっても、90歳まで生きれば十分長生きと呼べる。この中でもアクティブに生きられる時間はもっと短いだろう。しかし、これがもっと短い人間がいたらどのように生きるのだろうか?そして、それを何百年も生きる生物が見たらどう思うのだ…

品格を持った争い

学校から程近い閉店1時間前のスーパー。買い物客が少しずつ減ってきた店の中に入り、お惣菜売り場に向かうと、そこに鎮座ましますのは3割引のお弁当が数個。 もう少し待てば半額になるかも…ああ、でもその前に誰かが買ってしまうかも…。おなかは空いている。…