書き下ろしが多く読み応えがある

 完結した作品の事後談や単行本化されていない作品などを収録したもの。書下ろしが半分以上あるのではないだろうか。なので、内容を列挙しておく。

【第一巻】魔術師オーフェンはぐれ旅
●キエサルヒマの終端:
 作者のウェブサイトでキャラ名を隠して公開されていた作品の、キャラ名を復元したもの。本編完結直後のお話で、新天地を目指して旅立とうとするオーフェンと、彼を追いかけようとするクリーオウの姿を描いた作品。
●約束の地で:
 本編完結の二十年後くらいのお話。レティシャの子供たちが魔王と呼ばれるようになったオーフェンの元を訪ねて秘密を探ろうとするお話。オーフェンの娘たちやプールトーなどが登場する。
●魔王の娘の師匠:
 同じく本編完結の二十年後くらいのお話。オーフェンの娘ラッツベインの師匠であるマジクについて補足する短編。

 一本目はクリーオウが再び進みだすまでのお話という側面が強いけれど、二本目からは本編中では明らかにされることの無かった設定などを開示するという側面が強いかも。ギャグっぽく登場していたケシオン・ヴァンパイアやマジクの母親なども、物語の背景に深く関わっていたことが分かる。

【第二巻】エンジェル・ハウリング
●from the aspect of MIZU サーヴィル・キングス(眠る王権)
 帝都消滅半年後くらいの出来事。アスカラナンに向かおうとするミズーとジュディアが森の中で出会った、帝国に滅ぼされた王国の王女とその従者に関する物語。
●from the aspect of FURIU ガールズ・ハンティング(託す幕間)
 前述と同じ頃、おそらく近くの場所。野生化した有形精霊を捕獲しようとするフリウとマリオたちの物語。
●スィリーズ・アワーズ(どうでもいい時間)
 ドラマガ増刊収録。フリウと出会う十年くらい前のスィリーに関する短編。

 第一巻よりも、突然の別れや無力感に伴う、登場人物たちの心理的な変化を描いた作品という側面が強いように思う。

【第三巻】未収録短編集
●魔術師オーフェンまわり道?悪逆の森
 角川mini文庫収録。オーフェン、クリーオウ、マジクたちのドタバタ劇。
●魔術師オーフェンまわり道?ゼロの交点
 角川mini文庫収録。前述の三人に加えて、地人兄弟が登場するドタバタ劇。
●魔術師オーフェン往時編 怪人、再び
 チャイルドマン教室の七人が全員登場する作品。今までで一番コミクロンのセリフが多い短編ではなかろうか。マリア・フウォンを完膚なきまでに叩きのめしたあの怪人が再登場して牙の塔を蹂躙するドタバタなのだが、結構物語の深いところにまで関わっていることが仄めかされる。
 他のところにチャイルドマンの昔の名前って出てきたっけ?
●リングのカタマリ
 ザ・スニーカー収録。プロレス好きなのかな?
●パノのもっとみに冒険(1)〜(4)
 (4)以外はドラマガ増刊収録。魔女の見習いであるパノという少女が登場する、童話チックなお話。

 全体的に、書下ろしがいっぱいあってファンなら読みたいと思うだろうけれど、やはり値段が高い。色々と事情があり仕方のないことは分からなくも無いけれど、せめて分冊で出版してもらった方が、読者は嬉しかったんじゃないかな?
 内容的には大部分が面白いだけに、そこが残念。

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秋田禎信作品の書評