メイジがおこす明治維新

 明治維新前夜の日本。産業革命を魔法革命に、近代兵器を魔法に変えたような世界。
 父の汚名を雪ぎお家再興を目指して勉学にいそしむ若き俊英、久世伊織は、松江藩の執政神藤治部少輔の依頼を受け、魔導書の翻訳に赴くことになる。そこで出会うのは、日本の魔法士の祖であるシーボルトの孫、失本冬馬。開けっぴろげで人懐っこい性格の彼に、久世は戸惑いを覚えつつも徐々に惹かれていく。

 読み終わって思ったことのひとつ目。これはイラストと一体になった作品だということ。このイラストがなかったとしたら、最後の方の展開は納得いかないものになっていたかもしれない。
 二つ目は、誰が主人公だったっけ?ということ。裏主人公はこの世界の根幹にかかわるような大きな存在になってしまうし、脇役がいい味を出してしまうので、本来の主人公が全く目立たない。RPGで言うと勇者や戦士というより回復役、ギャグで言うとツッコミ要員みたいになってしまっていると思う。まあ彼らが決して悪いという訳ではないが、バトル展開で見せ場がないなんて、主人公としてかわいそう過ぎる。

 おそらく投稿作から修正したのだろうが、次以降への謎をたっぷり残した終わり方になっているので、たぶん続巻が刊行されるのだろう。

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田名部宗司作品の書評