突然放り込まれる歴史の闇

 日系アメリカ人のケヴィン・ヤマガタは、自分の描いている漫画のキャラクターと同じものが日本に既にあると知り、作者の許諾を受けるため、GHQ占領下の日本に再渡航する。ところが、問題のコウモリの絵を探すうちにトラブルに巻き込まれ、結果、下山事件(*)を預言する漫画に出会ってしまう。
 人の歴史の分岐点に現れるコウモリとは何なのか?

(*) 初代国鉄総裁下山定則轢死体で発見されながら、詳細不明のまま迷宮入りした事件。その後、真相を推理する作品が多数生まれる。

 読者もケヴィンと同じ立場で、まったく何も見えないところに放り込まれるので、どこに向かっているのか、何が言いたいのかも良く分からない状態がずっと続く。ただそこにあるのは、明確に未来が示されているにも拘らず感じる、現在の不透明感のみだ。
 既に実績がある作家のみに許される、じっくりとした作品展開だと思う。

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浦沢直樹作品の書評