警察の権力闘争

 地方都市で連続して起きる動物切りつけ事件。かつての大物警察官僚、最上倉太郎が関わっていると告げる現役警察官僚にして音宮美夜の飼い主でもある矢萩の指示に従って、事件現場へと入る美夜。電車内での痴漢犯を通じて出会い、妙に彼女に懐いてくる高校生の城之内愛澄を助手として、捜査を開始する。
 しかし相手は元大物。有形無形のコネと現在も衰えることのない風格を武器に、美夜の捜査を妨害してくる。遅々として進まない捜査の中、ついに事件はエスカレートして殺人事件へと発展してしまう。彼女の共感覚は犯人を見つけ出すことが出来るのか?

 何というか男性の扱いがすごく酷い。登場する男性は、変質狂、狂信者、女性を騙すやつ、陰謀家といった感じ。まあ、女性も含めて、総じて普通の人は登場しないので、仕方が無いといえば仕方が無い。周囲がこんな人間ばかりだったら、相手をするだけで疲れそう。そして、読んでいても釈然としなくて疲れる。
 今回は共感覚という能力があまり前面に出てこないんだなあと思っていたら、一応最後の解決の切り札として使われていました。

 作中で共感覚は特別なものではないと盛んに美夜は主張するけれど、やはりどうしても彼女はそこに囚われた人間にしか見えない。そしてその"傷"を自分に納得させるために駆使している感じがする。その結果として、もっと傷つくことを見続けているように思えるな。

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天祢涼作品の書評