それぞれに分けられる役割

 クラスメイトの中条深月に片思いをしている的場百太は、彼女がつぶやいたレモン・クラッシュという言葉に興味を持つ。それは女子の間で広まっているという噂に関係しているらしい。友人の弓原千春や矢嶋万騎と共に、噂を追って訪れた公園で、彼は不思議な黒いコウモリの影を見る。
 その後、なぜか中条深月につき従うようになってしまった弓原千春を追いかけて、深月の中学時代の友人、宮下藤花や歌上雪乃と共に進んだ先で、彼らは世界の危機とそれと戦おうとする存在、そしてその結末を知る。

 自分でも本当はどうしたいのかよく分からない夢や希望。それは何かの影響を受けて変化したり、大きな障害にぶつかってついえたりもする。
 そんな瞬間瞬間に、様々な局面で浮かび上がってくる負の感情。これらは誰かに押し付けてまとめて消せたりするものではなく、一人ひとりが向き合って処理しなければならないものなのだろう。そうすればその先には新しい何かも見つかる気がする。

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上遠野浩平作品の書評