Q.E.D.-証明終了- (31) (加藤元浩)

自分を縛るもの

 MITを卒業して日本の高校に入学し直した燈馬想という少年と、高校の同級生であり父親が警察官でもある活動系少女、水原可奈の二人を中心に、日常で巻き込まれる事件や、燈馬の友人から持ち込まれる事件などを解決するお話。
 かなりの頻度で、数学や物理に関する話題が事件に関係するように織り込まれているのが特徴で、解決編の前には必ず"Q.E.D."の文字が入る。こんなわけで、結構地味な作品であり、掲載誌も季刊だったりして、あまり人気が出そうもないのだが、息長く続いている。
 単行本は大抵二話完結の構成になっているし、前の話との関係もそれほど強くはないので、どこから入っても読めるといえば読める。

 これはその31巻目。「眼の中の悪魔」では、科学者を縛るものが描かれている。自分の好きなことを気ままにやっているように見えるかもしれないが、科学者も人間である以上、生活をするためにはお金を稼ぐ必要があるし、そのためにはお金を持っている人に価値を認めさせる必要があるわけで…。お金をとって来やすい研究と自分がやりたい研究は異なりがちなので、そういったところで歪みは発生しやすい。何のために自分は研究しているのか、という当初の目的を見失うと、変な方向に暴走することもあるかもしれない。
 「約束」では、殺人者が縛られている約束が描かれている。約束は大切だけど、生きている人間より優先されるということはないだろう。あまりまじめに考えすぎるのも危険だということで。

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加藤元浩作品の書評