C.M.B.森羅博物館の事件目録 (9) (加藤元浩)

価値とは

 14歳でありながら考古学に深い造詣を持つゆえに高校に編入した榊森羅と、その学園の理事長の孫である七瀬立樹の二人の周りで起きる事件を描いた作品。作者の他作品である「Q.E.D.-証明終了-」と世界がリンクしており、そちらの主人公である燈馬想は榊森羅の従兄という設定である。
 「Q.E.D.-証明終了-」が数学や物理に関する事件を描いた作品だとすると、こちらは歴史・考古学に関する事件を描いた作品と言えよう。当初は、森羅の持つ3つの指輪(東方の三賢者の頭文字C,M,Bを冠した、あらゆる情報にアクセスする権利を持つもの)に関する話が多かった様に思うが、最近では森羅の持つ独特な価値観で世の中の出来事を見直す、みたいな描き方に変わってきている気がする。

 これはその9巻目。「太陽とフォークロア」「メタモルフォーゼ」「死滅回遊」の三編収録。この三編の共通点を無理矢理見つけるとすると、価値観の違い、だろう。たとえ同じものを見て、同じ空気を吸って、同じ音を聞いて生きている人達がいたとしても、感じることはそれぞれ違う。そして、人の持っているものをうらやましく思ってしまう。
 この三編で描かれる犯人達は、他の人から見ればうらやましく思われるものを持っている。でも、その価値には気づかない。気づいたとしても、他にもっと高い価値を見出してしまう。それは仕方のないことかもしれない。でも、何か悲しく思える。

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加藤元浩作品の書評