名探偵に薔薇を

 アニメ化もされた「スパイラル〜推理の絆〜」の原作者である城平京氏のデビュー作。ボクは敬虔なミステリーファンではないのでよく知らないけれど、ノックスの十戒でタブーとされている、未知の毒薬を使用した殺人が起きるミステリー。ここで使用されるロジックからは、後のスパイラルで使用されるロジックと同質の匂いを感じる。

 小人地獄。無味無臭にして、一度体内に入れば何の痕跡も残さず速やかに死に至らしめる毒薬の名。著者はこの毒薬を道具として、名探偵の苦悩を描いた。本書は二部構成になっており、第一部では小人地獄の由来と威力が示され、読者にとっての”現実”として小人地獄の存在を印象付ける。第二部では、第一部で得た知識が謎解きの前提として活用されている。
 本来ならば起こるはずもない殺人。一つの事件の動機が明らかにされるとき、また一つの不幸が訪れる…。謎はすっきりと解き明かされるかもしれませんが、読者の心に爽快感が訪れるかは自明ではありません。


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城平京作品の書評