小説スパイラル 推理の絆 (2) 鋼鉄番長の密室

 「スパイラル〜推理の絆〜」のオリジナル小説第2弾。第1弾は最強の剣士から論理を駆使して一本を取る、という展開だったけれど、今回はかつて日本に生息していたという番長という生き物にまつわる事件を扱うという、もっとありえない展開。でも、馬鹿馬鹿しく、どこか切なく、しかしとても現実に満ちている。

 真夜中に牛乳の買出しに出た歩は公園で踊る少女牧野千影に出会い、奇妙なメダルを投げつけられる。翌日、そのメダルを見たひよのはメダルにまつわる番長たちの熱き物語を話し始めた…
 メダルの真の持ち主、鋼鉄番長の死の密室を開き、歩は千影の呪縛を解き放つことができるのか?
 いきなり”番長”の歴史が大真面目に語られます。あまりにも真剣に語られるので、一瞬、本当の歴史かと思ってしまうほどです。ここまで聞いて馬鹿馬鹿しいと思ってしまってはいけません。この話の中にちりばめられた言葉たちが、最後には意味ある場所にきちんと収まるのです。
 さび付いた扉が開かれたとき、一人の少女には幸せがもたらされ、少ししんみりとした気持ちになれます。設定を笑いながら楽しみたい方に。


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城平京作品の書評