自らの死を見る少女と、死をまき散らす少年の出会い

 西洋風ファンタジーということで作者の最近の傾向とは少し違う作品なのかな、と思い読み始めたのだけれど、キャラクター的な面では、明らかに「さくらファミリア!」などの近作を踏襲している。
 戦場にあって鎧も身につけず、踊り子の様な服装で大剣を振るうミネルヴァと、獣の烙印による殺戮衝動に怯えるクリストフォロ。そして彼らを保護下に置く、フランチェスカやその近衛たち。無意識に勘違いさせるような発言をすればそれに過敏に反応し、彼らにちょっかいを出して楽しむお姉さん役がいるという構図は、まさに「さくらファミリア!」そのもの。

 一方で、託宣を下す女王の下で貴族や神職が実権を握るという政治体系や、女王の力をめぐり争いが起きるという構造は、「火目の巫女」に通じるものも感じる。人気作の良いところを取り入れつつ、あえてこの道を進もうということは、異能ファンタジーを書きたいという強い希望が作者にあるのかも知れない。
 問題は、そういう方面の作品を書くと何故かダークサイドに落ちる確率が高いということだろう。今回は何とかバランスを取り、プラスマイナスゼロに止めた感じだが、今後はどちらに傾くのか分からない。最近の、プラス思考、ハッピーエンド思考に傾きつつある流れの勢いを借りて、このシリーズも完結まで突っ走って欲しいと思います。

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杉井光作品の書評