ありきたりな言葉だけど、道具に罪はなく、常に使う側に問題がある。

 いくつかの秘密は暴露され、でも新たな謎も登場する展開。こう言ってしまうと何だけど、詳しい内容は読むべし。

 ところで、大気制御衛星暴走事件前の地球連合は、意外に政策決定機関としてきちんと機能していたらしいことが分かる。エネルギー分配問題の解決手段として戦争ゲームみたいなものを用いていることから考えて、全てのシティが壊滅的攻撃能力を有し、かつ、反撃を確実に防ぐことが出来ない、という状況が読み取れるだろう。
 内政的にも、全ての人が同程度に満ち足りた生活をおくれているならば、特に問題は発生しない。イスラム系の人が登場しないのでそのあたりの問題をどう回避したのかよく分からないが、とにかく人類は均質化されてしまっていた様に思える。

 満足してしまった人は、かなり保守的になる傾向がある気がする。なぜなら、変化した先でも同等以上の生活が保障されるという確信は、誰にもないからだ。でも一方で、人よりも良い生活を送りたいという意識も併せ持つ。他よりも飛び抜けた力を持てば、誰にもその地位を脅かされる心配はない。
 地球連合としては安定を望み、シティとしては向上を求める。そもそも事件は、どちらの性質が強く働いたんでしょうね?

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三枝零一作品の書評