謎がいっぱい、というか、何が謎なのかもまだよく分からない

 セナーセー市がついに臨時総督に叛旗を翻すも、軍警の圧倒的物量の前に敗北してしまう。地下に潜って革命活動を続けるアクリラ、カドム、エランカは、ラゴスやイサリの助けを借り、その他の市を巻き込みつつ、軍警の内部分裂、そして臨時総督の捕縛を目指すのだが。
 …という感じで、人間が争う感じで話が進んでいくなあ、と思っていると最後に話はとんでもない方に向かう。本を読むにしても、自分が人間だという前提からはなかなか脱却できないものだと痛感した。描写の割合とかを考慮に入れれば、単なる脇役で終わるはずはないんだよね。

 情報の断片は無数にあるとしても、それを再構築しストーリーを作るのは個人であり、そのストーリーは個人の常識の幅に依存せざるを得ない。例えば、遺跡を掘り返して何か人工物が出て来たとして、それが何に使うものかを推測するのは考古学者である。そして、その推論がある程度確からしいと考えられるのは、それを利用したのが自分たちと同じ種族であり、同様の思考形式を持つという前提があるからだと思う。どんぶりの様な土器が出てくれば何か水ものを入れたのだろうと想像するのが人間で、それ自体が食糧だったとは考えもしないだろう。
 全10巻の予定で、2巻も3巻も話はあさっての方に飛ぶらしいので、全くどういう物語になるのかは分かりません。

   bk1

   
   amazon

   


小川一水作品の書評