ハヤカワ文庫JA

理屈では止まれない段階

数多くの犠牲を出しながらも、紅天と蒼橋の和平はひとまず成った。紅天艦隊は撤退、連邦の平和維持部隊は解散となり、蒼橋は落ち着きを取り戻すかに見えたが、その後、紅天艦隊の一部隊が行方をくらましていることが判明する。 紅天の常軌を逸した作戦に、蒼…

宇宙に選ばれた観測者の生きる世界

ニュートン力学が有効になる領域では、初期の状態が分かっている限り、ある時刻における物体の状態を決定することが出来る。一方、量子力学では、物体の状態は波動関数で表されるのだが、これは、その物体に対する様々な状態が重ね合わさった解になっている…

失われない悲しみと怒りを癒すもの

2002年4月刊の復刻版。 人類の一部が超能力フォースを発現し、旧来の人類サードとの大戦争が勃発。超能力を持つ人類を率いた女王が、イタリア半島と共に新たな衛星となり眠りについてから17年。双方の人類は、かろうじて協力体制を築き、世界政府準備委員会…

要素の付加による形質の変化

時間は巻き戻り、西暦2010年代の日本に舞台は移る。国立感染症研究所に所属する感染症専門医の児玉圭伍と矢来華奈子は、アウトブレイク発生の報を受け、パラオに向かう。到着した島で初めに見たものは、浜辺に転々と転がる人の死体だった。 多数の犠牲者を出…

軍隊はひとつの生物、自死する細胞たち

母星系を空にする全戦力の投入により、連邦宇宙軍派遣艦隊を撤退に追い込むことに成功した<紅天>星系政府だが、戦略的優位性を築いたにもかかわらず、なぜか無用な攻撃を仕掛けてくる。政治力学の常識から考えれば、一地方星系政府が完全に東銀河連邦政府…

それぞれの思惑が絡み合う戦場

蒼橋義勇軍と紅天星系軍の初回攻防戦と、その結果生じた事故による被害を収拾する作業が今回のメイン。ただ、その混乱に乗じる形で、紅天星系軍の工作が進行する。蒼橋vs.紅天という基本的な構図の中に、紅天内部での政治対立、あるいは現場レベルでの蒼橋と…

宇宙空間を舞台とした独立運動

20年くらい前に発表された「銀河乞食軍団」シリーズを原本として、その前日談を描いた作品。同時に原本もリニューアルして発売されている様だから、それに彩りを添える新作を、という背景があったのかも知れない。 もともとのシリーズを読んだことがないので…

謎がいっぱい、というか、何が謎なのかもまだよく分からない

セナーセー市がついに臨時総督に叛旗を翻すも、軍警の圧倒的物量の前に敗北してしまう。地下に潜って革命活動を続けるアクリラ、カドム、エランカは、ラゴスやイサリの助けを借り、その他の市を巻き込みつつ、軍警の内部分裂、そして臨時総督の捕縛を目指す…

与えられた条件の中で、人々は懸命に生き抜こうとする

拡散時代を迎えた地球人類は、数多くの移民船を他の恒星系に向かって送り出した。多くの植民船は無事に植民星に到着し、そのテクノロジーを生かして繁栄し再び植民船を送り出すようになる。 しかし、植民星メニー・メニー・シープに到着したシェパード号は、…