物語がつなぐ青年と少女

 純文学作家を目指して書生みたいな恰好をしている青年矢文学が、編集者の薦めでライトノベルを書いたら爆発的なヒットを生み、作中の舞台を巡礼に来ていた少女椎名明日葉に一目ぼれしてしまい、お近づきになろうとするのだが…という作品。
 始まりと終わりがきれいにまとまっているし、相手に少しでも近付こうとして一歩一歩努力する結果として、自分の現在の状況を受け入れて行く、という変遷の描き方も面白いと思う。

 一方で、恋愛という二人の関係性を描いた物語でありながら、矢文学サイドから見た描写がほとんどだった様な気もする。だから、彼が変わっていく姿は実感できるのだけれど、椎名明日葉の変化は、彼の目を通した姿でしか分からなかった。
 友人や編集者など、突っ込めば色々と出てきそうなキャラもいるので、続巻が出るかもしれない。そういった機会に、主人公以外から見た人の姿という視点があっても良い様な気がした。

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壱月龍一作品の書評/レビュー