戦場の流儀

 三つ子の魂百までというけれど、権威によって幼少期に与えられた概念は、後々まで人の思考を縛る。権威の形は人それぞれで、親、教師、先輩、宗教、死にまつわるイベントなどあるけれど、この権威によって常識として刷り込まれたものが、自分の判断の物差しになるわけだ。
 この物差しは、人が内的に成長し自分の世界が広がっていく過程で更新されていくのが望ましいのだが、様々な事情でそれが出来ないケースも存在する。かつてジーザスが紛争地帯で出会った人間たちもその様なケースに該当し、自分たちの思想に従うように子供たちを教育して、権力者に従う人間兵器を作り出していた。そんな人々に自分で考え自分で判断する力をつける、という信念がジーザスの教育の根底にはある。
 御堂真奈美の名を出した少女暗殺者アッシュや、綾木日奈に対するジーザスの接し方は、表面的にはやさしいものではない。彼は教えないし、導かない。ただ現実を示し、判断するための情報を与えるだけだ。しかし、間違った方に進んで大けがをしそうになれば、助ける。彼の教育は常に実践的なのだ。

 こちらでも「死がふたりを分かつまで」とのリンクが明らかにされた。次巻は彼らにも活躍のチャンスがあるらしいです。

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七月鏡一作品の書評