ハードボイルド・アクションを崩した感じ

 吸血鬼が世界各地で組織を作り、人類社会と併存している世界。血が飲めず無能のために組織から放逐され、普通の高校生として生活を送っていた日下悠弥の前に、中学生程度にしか見えないエージェント、リゼット・ファン・ルクレールが現れる。彼女いわく、グールによる人間襲撃の容疑者として、彼を監視するという。
 騒がしくも穏やかな高校生活が続くかと思いきや、グール事件の生き残りである佐伯綾香と悠弥が出会うことにより、ヴァンピールの共同体を揺るがす事件へとつながっていく。

 赤いアルファロメオを駆り、ミサイルとか銃とか色んな兵器をぶっぱなしまくるアクション物。日常生活の描写に比べてアクション部分の描写はセンテンスが短めで、大概1行にまとまっておりテンポよく流れるが、反面、兵器に対する描写は少なく、アクションとしての重厚感には欠ける気がする。また、銃器をぶっぱなして暴れるだけなら人間の兵士にも出来るので、いまのところは、主役がヴァンピールであることの意味合いが薄い様にも感じる。
 キャラクターを幼くして電撃文庫に合わせた様に思われるが、この題材なら他のレーベルの方が書きやすいのではないかと思わなくもない。伏線だけ張って回収されていないし、文章は読みやすいと思うので、つづきをどのように展開してくるのかが楽しみな作品。

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布施文章作品の書評