ライバル登場?

 桐島新太が偶然に出会った早川鈴音は、月光文庫を愛読する貴重な同志であり、観測者となることを希望する少女だった。満月ツクモに挑戦状を叩き付け、それだけでなく、新太に対して好意らしきものを見せる早川の行動に、ツクモに尽くしても尽くしても報われないという想いを抱き始めていた彼は、二人との距離感の取り方に迷い、ツクモを怒らせてしまう。
 言わなくても分かってくれるだろうという根拠のない信頼が、様々な失敗を繰り返させ、微妙に関係をねじれさせていく。様々な人物の、様々な思惑が絡み合って発生した空白の導く結末は?

 幕間にはさまれるクルン日記が、本編中でツンツンしすぎるツクモのバランスをとる役割を果たしている。新太がそれを知ることはないのだろうが、思わずにやりとしてしまうようなことが、満月堂の中では起こっているのだろう。

 本巻はきちんと完結しているのだが、全体の流れから見ると、前巻が二人の出会いである「起」、本巻が二人の物語である「承」、そして、今回の流れから見て次巻は「転」の展開になることは、ほぼ間違いないと思う。でもそうだとすると、結構早くまとまっちゃうような気もするな。

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瀬那和章作品の書評