そこには確かにあった

 ある日から、輪堂進は奇妙な猫をよく見るようになる。マントの様に見える影を纏い、筒状の帽子をかぶった変な猫。しかし、幼なじみの真駒以緒や、写真部の先輩である相原亜子には見えないらしい。
 その時も、変な鳴き声がした気がして、何もないところをじっとみていたら、転校生の無子規憐に興味を持たれてしまった。憐はそれをブギーポップと呼び、彼女につきあってそれを探して街を歩き回ることになる。

 同じ街には、失踪した合成人間の謎を探るため、フォルテッシモも訪れていた。しかし、街に入った途端に統和機構との連絡は途絶え、不可思議な攻撃を受けるようになる。最強の能力でも倒すことのできない相手。その能力の謎とは。


 穏やかな世界、平和な世界というのは、実は意外に簡単に作れるのだと思う。小さなところでは、引きこもった自分の部屋。もう少し大きくすれば、さまざまな矛盾を軍事力や経済力で外に押し付ける国。精神的には、空想の世界なんかもそれに該当するかもしれない。他の誰も通さず、外に出なければ、そこはとても居心地がよい。外に目を向けなければ、誰も矛盾に気づくことはない。
 まあしかし、そんな世界はいずれ崩壊する。自分から外に出ようと思うのかもしれないし、外から壊されるのかもしれない。その時に、幸せだった過去の記憶は、自分を支えてくれるものになるのでしょうか。あるいは、次の逃避先を探すための原動力になるのでしょうか。

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上遠野浩平作品の書評