人間から離れた少年と、人間に近づこうとする少女

 日課の夜のランニングの途中、学校で見慣れない少女の人影を見つけた神崎光輔は、不思議に思い彼女に近づく。そこにいたのは銀髪の少女と、岩の怪物。少女の手を引いて逃げようとした光輔は、岩の怪物に左胸を貫かれて意識を失う。
 次に目覚めたのは少女の部屋。目の前の銀髪の少女は、彼は死んでしまったと言う。いまの彼は、アンドロイドのボディに意識が乗り移っているだけの存在だと。そんな彼女の言葉を信じられず、部屋を飛び出し自分の家に帰った光輔だが、翌日の教室には、月夜野イリアと名乗る昨夜の少女がいた。

 走ることと国語が好きという程度の、特に突出したところがない少年と、駄洒落みたいな言い間違いばかりする宇宙人が主人公で、その脇を少年の幼なじみの少女佐藤日奈子と、友人の少年渡良瀬蒼馬が固める。悪役は類型的な分かりやすい人。
 全体的に筆致は落ち着いていてすんなり読めるけれど、人によっては起伏がなさ過ぎると感じるかも知れない。ただ、日常から乖離してしまった少年が、日常を取り戻すということがテーマになっていると思うので、あまりハイテンションだとテーマと合わないだろう。

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北川拓磨作品の書評