混迷の再出発

 『疑探偵トラップ』の打ち切り。予想はしていたとしても、実際にその時が来れば衝撃は大きい。生活のたつきを失う小河チーフの動揺はリアルだ。そしてここで、服部哲編集が作った流れは、一度途絶えてしまうことになる。

 気を取り直して次の連載を目指す真城と高木の二人だが、彼らの障害として立ちはだかるのは、味方であるべき港浦編集だ。作家の特性を生かすという方向ではなく、自分の好みであるギャグを二人に描かせるため、あの手この手の努力を惜しまない。その背景にあるのは、先輩編集との実績差と、後輩編集からの突き上げに感じる焦りだ。
 追い詰められれば、火事場の馬鹿力で普段は出てこないアイデアが出てくることもあるだろう。しかし多くの場合は焦りが空回りを生み、悪い結果になることも多い。そして追い詰められ余裕がなくなってくれば、新たに何かを生み出すための時間もなくなり、いまあるものを肯定するためのロジック作りを無意識にするようになる。こんな負のスパイラルに入ってしまえば、良い作品はできないだろう。
 そんな状態に入りつつある港浦編集に対し、自分たちに会った作品を作るための真城の反乱は成功するのか?そして、ネームに追い詰められる高木は蒼樹紅に急接近!

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大場つぐみ作品の書評