胎動

 大切なものを権力に奪われた時にどうするか。涙を飲んで諦めるか、代わりのものを見つけて慰めとするか、はたまた、取り戻そうと行動するか。これは取り戻そうと行動する人たちの物語。ただし、取り戻そうとするものや取り戻すための手段の選び方は、それぞれ少しずつ異なっている。

 世界政府のお膝元、スイス・ベルンで時を止めようとしていた時計塔と、新たに時を刻み始める時計に関するエピソードの第一章から始まり、オークションにかけられる一台のピアノとハルクの関係が詳らかにされることによって一人の女性の止まった時間が動き出す第二章。そして、第三章からはDESTに関係する人々が登場する。
 養父から刺青の技術と一枚の絵を引き継いだ赤羽慶太、DESTの旧指導者UMAを名乗る赤い目の少年。彼らが受け継いだ4枚の絵が、DESTの今後の行動を指し示す。

 今回は、ヴァンダル自身の行動よりも、彼らに対抗するように動く周囲の人々が物語の中心にいる。今後は、今回登場した人々がそれぞれ干渉し合いながら、世界のあるべき姿を求めて行動していくのだろう。

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美奈川護作品の書評