普通の少年と異世界少女の出会い

 10年前に両親を事故で失ってから何事にもやる気がなくなってしまった少年の矢上玖朗が、異世界の血統を継ぎ世界を救う使命を持つ少女の九季塚鋼音に命を救われ、彼女が身を置くバトル世界に巻き込まれていくというストーリー。
 どこにでもいるような普通の人間が運命に導かれて非日常の世界に入り込み、強大な敵と出会い敗れ、幼なじみの励ましを受けて再起し、ヒロインを守るため覚悟を決めて再び戦いに挑むという形式は、王道中の王道として人気を集めてもおかしくはないはずだ。

 でも、個人的にどこか物語に入り込めない気がした。
 文章展開がぎこちなく感じるから?など色々と理由を考えたのだが、自分として一番すっきりしたのは、世界観が統一されていないと感じたからではないかと思う。
 登場人物たちが持つ武器や技などには名前がルビで振られている。それが、英語だったりルーマニア語だったり、古代バビロニア神話由来だったり北欧神話由来だったり、何がベースにあるのか理解できなかったのだ。

 好意的な解釈としては、色々な世界観に基づく異世界の勢力同士がぶつかり合っているから、と見ることもできるかも知れないが、明確にそう解釈できる構造は示されていないように思えたし、ギリギリそうかなあと思えないこともないが、彼らの振るう力の起源は一つらしいことを思えばやはり違う気がする。

 次の展開があることが仄めかされて終わっているので、そちらで色々スッキリと解決が示されることを期待したいと思う。

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無嶋樹了作品の書評