少女の復讐劇と世界の秘密

 父殺しの汚名を着せられたエリザベス・スタリーヘブンは、処刑寸前に逃げ出し、男装してベティ・ザ・キッドと呼ばれる賞金稼ぎとなり、戦車に乗って父の仇であるロングストライドを追う。
 彼女の復讐の旅に同行するのは、かつては砂漠中で伝説となりながら名を捨てウィリアム・ブレイクと、先住民と入植者のハーフであるフラニー・ベリーズ。素人同然の銃の腕しか持たないベティは、彼らのサポートを受けながらロングストライドに決闘を迫り、そして寸前で逃げられる。
 ロングストライドが殺しをする目的、ベティたちが乗る戦車など、様々な要素がつながる時、砂漠に隠された秘密が明らかになる。

 一度は文明が発展しながらも、どこかのタイミングで西部劇レベルの科学力に退化している世界。砂漠に点在するレインスポットに入植者たちは集まり、砂漠を渡る亀や鮫を交通手段として利用し、各市にいる保安官が治安を守っているものの、基本的には力があるものが支配している。
 そんな世界における正義とは、個人個人を守るルールではなく、集団全体に最大利益をもたらす圧倒的な力だ。その正義の前では、個人の幸福は必ずしも尊重されない。そんな正義の犠牲になったベティは、彼女なりの正義を貫くため、銃を手に取り仇を追いかける。
 一方で、そんな世界観とは一線を画するのが、先住民のシヤマニだ。彼らは入植者のペオポルスに住む場所を追いやられて砂漠で暮らしながら、マニトウという何かを信じ、その導くままに生きる。彼らの正義はマニトウが決めるのだ。

 上巻ではメインキャラクターたちの紹介がなされる。下巻では背景にある世界の秘密が明らかにされるのだろう。

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秋田禎信作品の書評