侵略にあらがう世界、神に対峙する人間

 有角族の国ロケィラと有翼族の国オルワナを同盟に導くことに成功した導神クルァシンこと奄倉信は、発展界アルマダートからの世界の侵略・植民地化に対抗する力をつけるため、盟友の女皇セレィと共に、盲目族が支配する隣国アヌビシアに赴く。アヌビシアの王ネレィクから、文化の違いや相互の歴史から来る手痛い洗礼を受けながらも、何とか信頼関係を築くことに成功したセレィは、同盟の重要さと同国への利点を説く。
 その頃、クルァシンは、アヌビシアの要職であり、国内の情報伝達に重要な役割を果たす大央聴の候補である少女、サーリャと交流を深めていた。そして、彼女の秘めた望みと、誰にも言えない自身の秘密を知る。
 一方、発展界からは、クルァシンの実力をはかるため、最強の神殺しである神狩り部隊の隊長、ルダ・ガイランが派遣されていた。そして、彼の背後では、アルマダートを支配する三社のトップたちが策謀を張り巡らし始める。

 1巻では、クルァシンよりも格上のメタ・フィジクスが登場し彼を苦しめたが、今回はあくまで人間がどこまで格上の存在に挑めるか、という所に眼目がある。そしてそれは、クルァシンが奄倉信だった頃に目指したやり方でもあるし、これからエナ・ガゼという世界が発展界からの侵略を排除するために目指す道でもあるだろう。
 あくまで今回は小手調べ。アルマダートからの戦力は、クルァシンと因縁深い神も含めて、どんどんと増えていく。だが、そんな状況だからこそ、メリェ、コリォといった女性たちから得られる安らぎも重要だ。そんなひと時くらいは、彼にも許されて良いだろう。

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宇野朴人作品の書評