相手への想いが世界を救う

 懐かしい名前が本当に久しぶりに、ノベライズとは言え新作を出していたので、懐かしくなって本だなの奥から引っ張り出して再読してみた。

 父母を事故で亡くし、初めて会った祖父に引き取られた8歳の少年、若葉・ユキムラ・ペンドラゴンは、初めて訪れた場所でアユミ・ガーシュインという少女に出会う。それから二人は、格闘をツォウ・レイシンに、魔導をファナガン・ウェスポールにそれぞれ師事して過ごしていた。
 彼らの住む台樹国には天剣王器という機関が存在している。これは、神・龍が生きた伝承の中に人間の代表として登場した名前でもあり、現代においては政治・軍事を担う王器・天剣を養成する機関だ。台樹国の15歳は全員王都に赴き、適性者は天剣王器にて訓練を受ける義務がある。共に15歳となった若葉とアユミは王都に赴き、そして適性者として天剣王器に属することとなった。
 同じ様に王都に赴き、天剣王器の講師に就任したツォウ、ファナガンと共に、厳しい訓練に励む二人は、すぐに天剣王器の中で頭角を現し始める。そんなとき、台樹国に接する二大大国のうちの一つ、グランツァが不穏な動きを見せ始める。

 神話の時代の神や龍が築いた文明を利用して不安定な世界を生きている現在の人間たち。自分たちの手に余る技術を利用する代償は非常に大きい。天剣と王器は、古き神話の時代の源流を引き継ぐ存在であり、現代にあってはそんな代償を支払う側の存在だ。
 そんな運命に翻弄され、全てを捨てても世界を無に帰し一からやり直そうとする人間。あるいはいまの世界を守るために、大切な人を守るために自分を捨てる決断をする人間。様々な人間が登場し、その努力が伝説の存在を導いて世界を救うのだ。

 展開が荒っぽいところも散見されるのだが、妙に惹かれる作品です。

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海羽超史郎作品の書評