キャラよりも設定で描くSFファンタジー

 ある時、突然に闇元素という不可視の力を使う闇生物が出現し、その勢力範囲が拡大しつつある世界。人類は橋頭堡として多層構造海上枢機都市ハーモニカを建設し、その勢力範囲から都市部を防御しようとしていた。
 その尖兵となるのは、元繰術士と呼ばれる人間たち。闇生物と闇元素を研究した結果として発見された、紅炎、蒼水、碧風、錆土という四元素の力を、元繰紡術機という機械の力を使い現出させる才能を持った人間たちだった。
 そんな元繰術士や、闇生物と様々な形で戦うことを志す人々を育成する学校、退闇校研究科の学生である玖珂狛矢は、闇生物に襲われていた元繰術科の学生・四十崎士央を助け出す。闇生物にかまれ黒塩化しつつあるはずだったのに何故か無事だった彼女は、その秘密を守るべく、狛矢につきまとうことになる。

 三年前に狛矢や家族を襲ったネオプラズム事件の影響で、元繰術科から闇元素を駆逐する医療を志す研究科に転科した玖珂狛矢と、謎の特性を持つ少女・四十崎士央を中心として、彼らを取り巻く友人、長月果路菜や獅凍風吾、春城璃音などの学生たち、アスクラピウスの手という医療集団の第一人者である八代紅や上總詠士などを絡めつつ、突如世界に出現した魔法の世界を描いていく。
 少し固めの雰囲気を持ったSFファンタジー。今回は設定や登場人物の背景紹介が大きな部分を占めるので、今後、物語世界に潜む陰謀めいた歴史なども描かれていくのだろうと思う。

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藤谷ある作品の書評