理想のまま留めたい願望

 黒の読姫ダリアンとその鍵守ヒュー・アンソニー・ディスワードの幻書探しの活動を描く短編連作集の第6弾。今回は「雛形の書」「棺の書」「人化の書」「楽園」と断章「働く男」「本当の私」を収録している。
 「雛形の書」はカミラ・ザウアー・ケインズの兄レオン・キム・ケインズが初登場し、彼を狙う不死身の暗殺者とヒューイたちとの対決が描かれる。また「棺の書」では愛する人が死ぬことを認められない哀しさが感じられる。「人化の書」と「楽園」は同じ時間・場所でニアミスした黒の読姫と、壊れた読姫フランベルジュと焚書官ハルたちが出会った、海魔にまつわる2冊の幻書についての物語がそれぞれ描かれる。ふだんと違うちょとしたことがなければ、ニアミスでは済まなかっただろうけど。
 全体的に、理想のままで状態を留めたいという願望が色濃く出ているエピソードが多い巻だといえると思う。

 ダリアンとヒューイ、その他の登場人物の関係性が定着してきたので、安定した面白さがある。イラストのダリアンが回を追うごとに幼くなっている気はするけれど…。
 基本的な流れとして、幻書に関わる人はそのまま亡くなることが多いけれど、今回はちょっと違うパターンもあり、既知の人物が多く登場しているし、もしかすると再登場することもあるのかもというキャラクターも何人か登場している。例えば、ルクレース・ラングなどはそうかもしれない。ところで、今回は奇矯な学者の登場頻度が多くないですか?

 連載の短編ばかりではなく、たまには長編もあっても良いかもと思う。サブキャラのスピンオフみたいなものがあっても面白いかもしれない。

   bk1

   
   amazon

   

三雲岳斗作品の書評