雀卓を囲む熱き少女たち

 清澄高校一年の宮永咲は、友人の須賀京太郎に連れられ麻雀部へと行く。足りない面子を補うためだ。そこには、全国中学生麻雀大会個人戦優勝の原村和と、彼女の友人の片岡優希がいて、4人で卓を囲むことになる。
 結果は原村和の圧勝。宮永咲は目立たないプレイヤーと思われていたのだが、後から現れた部長の竹井久は結果を見て愕然とする。咲は3連続でわざと±0の結果を出していたのだ。そんなことは、圧倒的な実力差と場を支配するレベルの強運がなければ実行できない。彼女を引き入れるため、そして天才と世間から騒がれる和を刺激するため、竹井久は一計をめぐらす。

 麻雀が一般に普及し、プロスポーツのレベルまで知名度が上がっている世界において、高校生麻雀部員の熱き戦いを描く作品。1巻では、家族としか麻雀を打ったことがないゆえに自分の実力を客観的に知らなかったふつうの少女・咲と、一流の家に育ち周囲から才能を賞賛されて成長した少女・和の出会い、そして共に高校一を目指して切磋琢磨する関係が築かれるまでが描かれる。

 麻雀という、一部には熱狂的愛好者がいながら、いまいちマイナーな競技に人生をかけるという、常識とギャップがある真っ直ぐな情熱を描いているところが面白い。全く麻雀が分からないと興味をそそられない可能性もあるけれど、かわいらしく描かれる少女たちと、その少女たちが織り成す熱き戦いを見るというだけでも、十分に楽しめると思う。そもそも、「ヒカルの碁」「3月のライオン」「ちはやふる」などのヒットを見ても、競技自体がメジャーであるか否かは物語の面白さとは必ずしも相関しないのだ。
 二人の少女の出会いはどんな勝負を生み出していくのか。楽しみだ。

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小林立作品の書評