呪縛を解き放つ言葉の銃弾

 桐ケ谷和人は、ゲーム内での銃撃で実際に人を殺す死銃の存在を調査するという依頼を総務省総合通信基盤局VRワールド管轄部門の菊岡誠二郎から受け、ガンゲイル・オンラインへとアクセスした。銃による対人戦闘を基本とする世界においてあえて光剣を使い、対物狙撃銃使いの少女・シノンの助けを得て、目的の人物が参加するトーナメントの決勝バトルロイヤルへと進出することに成功した。
 ソード・アート・オンラインの亡霊、ラフィン・コフィンの生き残りと対峙することでキリトによみがえる、自身のPKの記憶。ゲームでの死が現実の死を意味したあの世界では、それは殺人を意味しており、その記憶は彼を苛み始める。そしてそれは、かつて銀行強盗に巻き込まれ人を撃ってしまった朝田詩乃の悩みと似たものがあった。

 そして決勝バトルロイヤルが始まる。かつて自らが放った銃弾、そして剣閃は、幻の銃弾となって彼らを竦ませる。その幻を振り払い、いま目の前にある現実に立ち向かうことができるのか?恐怖を振り払う一撃が放たれる。

 茅場明彦の起こした事件が未だに犠牲者の心を捉えて離さない。投じられた一石が起こした波紋は新たな波紋を呼び起こして干渉し、大きなうねりが目に見え始めている。この事件はその序章と言うべきなのかもしれない。
 今回も仮想世界で結城明日奈の活躍のチャンスはなかったけれど、現実世界ではキリトをサポート出来たと言えるのかな?次は活躍のチャンスが与えられれば良いけれど。

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川原礫作品の書評