死ねない少女が死にたい理由

 語木璃一は、桜の木から吊り下げた荒縄の輪に首をかけ、自転車の荷台の上に立つ密森なゆたと出会う。誤解の仕様もない自殺の光景だ。ところが枝は折れ荒縄は切れ、自殺は失敗してしまう。なゆた曰く、百二十二回目の自殺の失敗。死のうとしても死ねないという彼女の特質に「なゆたエフェクト」と名付けた語木璃一は、なゆたの記録者を自認して彼女に付きまとう。いわゆるストーカーだ。
 ありとあらゆる手段で自殺に失敗したなゆたは、世間を騒がす猟奇殺人者キリングKを探し、殺してもらおうとする。一方、璃一はなゆたが死のうとする理由を調べ始めるのだった。

 自ら望んで自ら命を断とうとする少女と、対価を得て人を殺す殺人鬼、そして最後に明かされるもう一つの勢力の視点から、死ぬことと生きることの意味を問いかける作品だ。
 自殺はいけない、人を殺してはいけないというのは一般的には全く正しいけれど、自殺をしようとか人を殺そうと思い切る過程には、そうせずにはいられない理由があることもある。ただ正論を唱えるだけでは、それを翻意させることは容易ではない。

 最後にすごい機関が出てきて最初の伏線を回収していくんだけど、それはどうしても必要だったのか?生きているかどうか微妙な気がする。ふつうの話で終わっても良かったんじゃなかろうか。

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一肇作品の書評