メイドくんの心の奥は

 瑞鶴咲夜が鳳翔女学院に転校するため、少年従僕の媛代雪風は女装して一緒に転校することを命じられる。山奥の古風な女子高にお嬢様と二人で転校する。困惑と共に喜びも感じる雪風だったが、転校寸前で咲夜は父親にヨーロッパへ連れ去られ、雪風はただ一人で、女子高に先行して転校することになってしまう。
 そして訪れた鳳翔女学院は、事前に調べた校風とは全く異なり、縦ロールの宍戸來華が率いる救世軍という集団と、革命生徒評議会という生徒会が対立して妙な闘争を繰り広げていたり、瑞鶴家の所有である別邸・咲夜は、革命生徒評議会の寮として占拠されていた。

 革命生徒評議会議長の鞍馬九葉や、副議長にしてヴァレリー女公爵・ヘイゼルベル王女殿下、書記の漆羽奇那という個性の強い面々に流され、彼女たちと同居することになる雪風は、その後の流れ上、何故か中等部生徒会長選挙に立候補することになってしまう。男の子なのに。。

 咲夜と雪風の幼少期にあった出来事の後遺症で、主人と従僕という関係性に当てはめてしか生きられなくなったという現状があり、成長に伴ってそれが破綻しようとする中で、新たな関係性の中に希望が生まれていく、という様な物語になっている。
 前半はかわいい男の子が女装をさせられ、メイドさんになり、女の園で翻弄されるという属性重視の展開になりながら、後半では主人公二人の過去のエピソードをひも解くことで、現在に至るまでの心理的呪縛をつまびらかにしていくという、暗さも含んでいる。
 この、若干性格の悪いヒロインを採用しながら、そこに面白さを見出していくところは、作者らしいストーリーだと思う。

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大樹連司の書評