互いの想いゆえに傷つく心

 妹姫ロゼリーを取り込んだ悪魔キャンディッドに狙われる銀竜テオバルトは、共に狙われる女性アマポーラを護るため、思い出を失い彼女に他人を見る目で見られて傷つきながらも、必死に悪魔を倒し続ける。月神との契約を果たし、再び彼女の隣に戻るために。
 一方、影ながら守られるアマポーラは、テオバルトを救うために失った彼との思い出の欠落に苦しんでいた。何か大切な記憶があることは分かるが、それが何か分からない。その困惑は徐々に彼女の精神を、肉体を蝕んでいく。

 同じ銀竜であり、アマポーラを保護するラトレイア王家の千年前の姫でもあるラシェルの護衛をかいくぐり、あの手この手でアマポーラに手を出して来るキャンディッドを完全に倒すため、銀竜たちはある計略を練るのだった。

 滅ぼした国のいらない王子と滅ぼされた国の王女がはじめは憎悪しながらも、様々な困難を乗り越えていくにつれて思いを通じていく。しかしその恋慕は、王子が人外の存在となってしまうことにより引き裂かれる。そして、傷ついたその王子を救うために、王女は彼に関する記憶を失うことに同意する。そんな二人が再び出会うのが今回の話だ。
 レーベル名にファンタジアと入りながら、ここまで純粋なファンタジーは珍しいのだが、二人の心情と、その間で心を痛める幼い娘エレンの姿を丁寧に描写しており、美しい。1巻だけだと悲恋という印象なのだが、ここまで続編が刊行されることにより、ハッピーエンドとなった。

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淡路帆希作品の書評