一瞬で入れ替わる立場

 ライオンの育てた人間の娘カプリと対立してしまったタロウザ。しかし、彼女たちに言葉を届ける努力をあきらめることはなく、子供たちから少しずつ懐柔していく。そんな時にライオンの群れに起きる危機。助けを求められたタロウザは、仲間を連れてカプリたちの所へ向かう。そこで繰り広げられる光景に、タロウザは、そしてカプリは何を思うか?

 一難去ってまた一難。タロウザたちの縄張りに、タロウザの理想とは真っ向から対立する考え方を持った人間の男の子がやって来る。

 弱肉強食の掟は、強者には優しいが弱者には厳しい。だから自分が強者の位置にいるときには、その脅威を理解することはできない。本当に理解できるのは、弱者の立場に落ちたときだ。そしてその位置づけでは、どうぶつの国の頂点に位置するライオンですら安定はしていない。
 タロウザは弱肉強食というシステムのかなりの部分を否定する。それは自分が食べられる立場になったら嫌だという思いからだ。しかし、いつかは食べられるんだからそれまでは快楽を享受してもいいじゃないか、という考え方をする者もいる。それが新しいタロウザの敵となる。

   bk1

   
   amazon

   

雷句誠作品の書評