残された強い感情が引き起こす事件

 王弟リチャードに呼び出されたフォグは、煉術師ギルドを統括する組織・レキュリィの宴が彼を呼びだしていること知らされる。そこにいたのは、フォグと出自を同じくする、ローレン・エヌ・コーンフィールドが生み出したホムンクルスの妹だった。
 一方、アルトの前には、前回の事件で友だちとなり、そして自ら葬り去ったはずの少女キリエが現れる。彼女にも意外な正体があった。そんなキリエは、フォグに恨みを持つ煉術師イパーシ・テテスを蘇らせ、アイリス・キャリエルの生み出した魔剣の一振り、アイリスの4番を与える。
 キリエとイパーシ、それぞれが持つ他者への固執の念が、再び匍都に事件を巻き起こす。

 なくしたり振り払った気がしていても、人間の芯に残る記憶はあって、無自覚な行動を支配するのかもしれない。今回の事件の根底にはそういったものだろう。そしてもたらされる結果は、無自覚ゆえに深く突き刺さって、致命的なものになりやすい。
 こういったことを突き詰めて描きすぎると、陰惨になりすぎたりしやすいと思うのだが、今回は楽しめる範囲で止められていると思う。

 今回の事件は収まったけれども、その裏側で動いていた人物、そして今回の事件で壊れてしまった人物が次にどんな仕掛けをして来るのか。その目的は何なのか。まだまだ楽しめると思う。

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藤原祐作品の書評