戦わなければ本も読めない時代(評価:☆☆☆☆☆)


 有川浩さんの作品の特徴である、戦闘職種の人たちの生き様と、彼らの間に芽生えるほんわかした感情を取り扱っています。しかし、これまでと少し異なるのは、架空の戦闘職種ということ。なんと、図書館の司書さんがドンパチをします。おっとり静かなイメージの司書さんと戦いは結びつき難いかも知れませんが、そうならざるを得ないだけの事情があるのです。

 昭和に続く正化元年、検閲を義務付ける法律、メディア良化法が施行された。これにより、メディア良化委員会が問題ありと判断した本たちは、回収され、処分されるのが常識となった日本。この横暴に対し、改正図書館法、通称、図書館の自由法に基づき、図書館がメディア良化委員会の対抗組織として立ち上がり、本たちの処遇をめぐっての戦いが繰り広げられる…という、設定。現実の放送/出版コードによる自主規制や政治への無関心に対する皮肉も含んでいて、これ自体にとても興味を引かれます。
 もちろんドンパチをするだけでなく、政治的駆け引きの妙や、図書特殊部隊に配属された笠原郁とその上官である堂上篤との恋の行方など、見所は満載。現実の図書館でも銃のない戦いが起こっているのかも知れないなどと、図書館自体にも興味を向けさせられる作品だと思います。楽しんで本を読みたい、という方にオススメです。

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有川浩作品の書評