新約聖書をモチーフにした、現代の美少女同居もの

 「神様のメモ帳」「さよならピアノソナタ」の延長線上に登場した、杉井光さんの新作。何が続いているかといえば、それは主人公の性格だろう。まわりには巨乳・微乳とりまぜてかわいい女の子がいて、その子たちは主人公にラブなのに、本人だけがいまいちピンと来ていない。自分に自信が持てず、負け犬根性たっぷり配合の魂を持っている。前半はそういう性格のせいで、失敗したり落ち込んだりするんだけれど、最後には自分に気合を入れてがんばって、何とかしてしまう。そういうところがとても似ている。

 今回の主人公である祐太は、冒頭で父親に夜逃げされてしまい、彼の億単位の借金を押し付けられてしまう。そんな祐太の家に、双子の美少女シスター、エリとレマが突然押しかけてきて、いきなり殺されそうになりつつも、上手いこと言いくるめ、一緒に生活することになってしまう。
 まあここまでならば、絶対に無いということも無いかもしれないが、驚くべきは彼らの前世。祐太はイスカリオテのユダの生まれ変わりで、エリとレマは救世主イエスの生まれ変わり。二千年前にユダがイエスを裏切った際に得た褒賞の銀貨三十枚を資本金として設立された、三十銀貨財団が彼らの借金の債権者。とたんにオカルト色が加わってくる。

 新約聖書にモチーフを求めながら、単なるオカルトを超越してくるのが杉井流。イエスが実は女だったと解釈することで宗教画にあるユダがイエスにキスするシーンを恋愛ネタとしたり、マタイ福音書使徒言行録の記述の不一致から物語の核心となる謎を生み出してみたり、真面目なキリスト教徒から見たら激怒するかもしれないことも平気でやってしまう。そして物語を面白くしてしまう。

 巨乳美女のガブリエル、ロリっ子のルシフェルも加わって、祐太を取り巻く環境は急変。ユダの記憶を取り戻し罪痕を得て、セクハラ三十銀貨財団の取立てをかわすことができるのか。

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杉井光作品の書評