引き継がれているものは…

 人間の寿命が延びたといっても、90歳まで生きれば十分長生きと呼べる。この中でもアクティブに生きられる時間はもっと短いだろう。しかし、これがもっと短い人間がいたらどのように生きるのだろうか?そして、それを何百年も生きる生物が見たらどう思うのだろう?

 ある日、高上昇・透兄弟は、いまは亡き母親の実家に呼び出された。そこで二人が出会ったのは封印された天狐、空幻だった。何故か二人を気に入った空幻は二人の家に守り神としてついて来てしまう…。
 平凡な家庭に紛れ込んできたお稲荷さまと、高上の水の司祭としての血に惹かれて集まってくる妖怪たちが引き起こす事件。そしてそれとは対照的な、ほのぼのとした日常を描いた物語です。

 浮世離れした空幻の、長寿ゆえの?人間には理解しがたい思考と行動が可愛らしく面白いが、それ以上に、昇・透の周辺に漂うほんわかした暖かな雰囲気が心地よく、思わずにんまりしてしまう。
 今後もこんな雰囲気を持ち続けて欲しいと思います。

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柴村仁作品の書評