厳然たるルールが冷徹にも要求する対価

 第14回ファンタジア長編小説大賞〈大賞〉受賞作である「12月のベロニカ」で眠れる少女とそれを護る騎士の姿を描いた作者による作品である。
 魔族と呼ばれる、一千年前からこの世界に出現した、強力な力を持ち人間を捕食する知性体と、それらを撃滅しこの世界とそれらの住む世界をつなぐ「扉」に鍵をかけ続けることを目的とするローマ教皇庁の戦士たち、エスクードの戦いや、退魔の剣ブラディミールに選ばれた少年とローマ教皇庁に属す魔族レイニーの係わりが描かれている。

 孤児として教会で育てられ、養父である神父によって剣技を仕込まれてきた高校生薫は、ある日ローマ教皇と面会させられる。そこで出会ったのは二人の女性。”レディ・キィ”ソフィアとその護衛者である魔族レイニー。そして薫は剣士としてソフィアの「盾」となる使命を持つことを告げられる。
 ソフィアを奪い扉を開けるべく襲い掛かってくる魔族とその眷属。薫と共に教会で育てられた魔術師真澄に忍び寄る魔手。普通の高校生として育った薫がレイニーに一つの決断を迫られたとき、無事ソフィアを守り、扉に鍵をかけることができるのか…。
 通常キリスト教をベースにした場合に見られるような宗教臭さは見当たりません。ファンタジーが嫌いでなければ、すんなり読めると思います。

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貴子潤一郎の書評