圧倒的な存在の登場

 どんな世界に行っても他存在との関係が途切れることはないらしい。あまりにミクロの世界なので自分の目で確かめた事はないし、確かめることもできないが、素粒子と呼ばれる物質の最小単位や原子・分子の間にも色々な力が働いていてお互いがお互いに影響を与えているし、雷は落ちるといいながら実は地表から空へ走るし、水は川となって高い所から低い所へ流れる。
 では、人間くらいに大きな単位になれば影響を受けないかというと、よく使う上下という概念は明らかに重力の影響を受けている。しかし、ロケットの様な装置を使えば、重力の井戸から脱出することは可能だ。ただし、それには重力よりも強い力が必要であることを忘れてはならない。

 運命というのは果たしてどれほど強い力なのだろうか。全ての存在は強者の打った布石に導かれる様に石を置き続けてしまうのだろうか。これまでコツコツと作り上げてきた盤面には、致命的な隙があったのだろうか。
 霧間凪の中に眠る真の魔女の目覚めによって、全ての流れが入り混じり、別の流れを生み出そうとしている。強者は流れを断ち切ろうとするだろう。弱者は流れに身を任せるのが賢い生き方だ。そして愚者は流れに逆らおうとするに違いない。

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上遠野浩平作品の書評