技術的興味だけで暴走する女子高生

 25年くらい未来の世界。成績は優秀だけれどトラブルばかり起こす女子高生三人組が所属する天文部に、15年前に墜ちた無人戦闘機のAIを復元する依頼が来る。目的は、老い先短い老人が戦争で子供たちを奪われた恨みを晴らすため、所属不明機を首都上空に飛ばして経済的混乱を引き起こし国に打撃を与えること。三人は、単純に技術的好奇心に基づき、その依頼を受ける。
 本作は、その過程で生じる友情物語や、空中戦の様子などを描いている。一応、男の子キャラも一人登場するのだけれど、どちらかというと恋愛系よりもキャットファイト的な側面の方が強い。

 依頼者は血を流さない復讐というお題目を免罪符としている。しかし、経済戦争はホットではないけれど、企業倒産などが起きれば首をくくる奴もいる。赤い血は見えないだけで、やっぱり血は流れると思う。
 金もあり、人脈も権力もある老人が、何故に正攻法で国を変えようと努力をしなかったのかが理解できない。それに、いかに自らの死が近いとはいえ、目の前にニンジンをぶら下げて高校生をつり、テロを首謀させるやり口が気に食わない。

 そんな訳で、今回のやり方はあまり好きにはなれないが、物語の背景には、戦争による遺伝的後遺症やそれを引き起こした者たちへの責任追及みたいな題材もあり、その辺は興味深い。結局、パイロットになった子以外あまり目立たない展開になってしまったので、他の二人の特性が引き立つエピソードを織り交ぜて次につなげれば、面白くなるかもしれません。

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南井大介作品の書評