それぞれに合ったやり方で

 1本目は世界一の富豪アランとその婚約者エリーが設立した慈善事業財団が支援する地域で起きた、国際開発支援を巡るトラブルの話。同じ失敗を二度と繰り返さないコツは、なぜ失敗したのかを客観的に分析し、その原因をひとつひとつつぶすことなのだけれど、言い訳をしてそのあたりをあいまいなままにしておくと、悲惨な事態を引き起こしてしまう。データは重要だけれど、持っているだけでは宝の持ち腐れにしかならないということだろう。
 2本目は可奈の友人の周辺で起きた、お金にまつわる殺人事件の話。これには事件を表す構造と類似したものとして母成堂という民話が出てきて、最後の解決をきれいに閉じさせる構成になっているのだけれど、もう少しそこをねっとりと描き込んでも面白かったんじゃないかなと思った。このあっさりしたスマートな描き方が作者の持ち味なのかも知れないが。

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加藤元浩作品の書評