残せたのはさようならの一言だけ

 本巻から御坂美琴のシスターズとアクセラレータの物語に話題は転換する。
 自分だけの確かな現実を築き上げるわけでもなく、『樹形図の設計者』という人の手により作られし神の預言に従っているだけという免罪符を振りかざし、倫理観のかけらもない実験を進める人々。一度動き始めてしまった計画は、少々の妨害では止まることはない。超電磁砲のパーソナルリアリティは、この流れを止めるだけの力を発揮できるだろうか。

 ストーリー構成が素直で分かりやすい。マネーカードを拾うという導入から始まって、布束砥信との遭遇、シスターズ計画の認識、そして、シスターズとの交流と、偶然と噂話から実験にまでたどり着くのは、ご都合主義という見方も出来るけれど、綺麗な流れであるように思う。そして、シスターズへの愛着のポイントとなる缶バッチの入手に至るストーリーも、これまでの流れから逸脱しておらず自然だ。
 本編から結末は分かりきっているのだけれど、そこに至るまでの御坂美琴の苦悩がこちらのメインになるのだろう。

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冬川基作品の書評