私の紙と字は、誰かを救えるのだろうか。

 文通相手の虚構を受け入れて恋をするエカ、理想を傷つけることを怖れて本気であたれないマル、何気ない一言で自分を縛ってしまっているオズ、そして母親の理想を体現しようとして崩れていくシバ。そんな女子高校生四人組が集まるのは放送室の一室。そこは外の悩みから切り離された場所…のはずだった。
 しかし、変わっていく周囲、否応なく訪れる転機。これらはそれぞれを少しずつ変え、変わらないはずの場所にも変化をもたらしていく。

 エントロピーが増大を続けるためなのか、望むと望まざるとに関わらず、変化は常に訪れる。そして、変化する中でも変わらないこともある。これはそんな変化の瞬間を切り取った作品。
 放って置いても別れの時は来るのに、そこに至る前に壊してしまいたくなるのは何故なのだろう。感情的でもあり、理性的でもある。刹那的でもあり、恒久的でもある。臆病でありながら大胆。そんな矛盾するような感情が渾然となって関係を作り上げている。

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紅玉いづき作品の書評