やさしい光の照らす場所

 真っ暗な細い路地を入った先にある建物の地下にある防具屋シャイニーテラスの客になるには、3つの約束を守る必要がある。シャイニーテラスのある街レーギスに住んでいること、レーギスに帰るために最大限の努力をすること、帰ったら店に顔を出し旅の出来事を語ること、の3つだ。そして店の壁には、未だ帰らざる客たちの名前を書いたメモが張られ、店主であるソラは彼らの帰りをじっと待っている。
 こんな防具屋のカウンターで語られる、世界の出来事と帰る場所を持つ人々の物語。

 籠の鳥という言葉は不自由の象徴ではあるけれど、籠が外敵から中のものを護ってくれているという事実も見逃してはならない。そこには、一方的ではあるけれど愛情があり、それを受け入れるのであれば、籠の中にいることは不自由という訳ではない。なぜなら、それを自分の意思で選択したのであるから。
 ある意味、このお店で売られる防具は、世界で自由に羽ばたくための大きな籠の様なものかもしれない。飛び立った先でも自分を護ってくれ、帰る先の止まり木の存在を約束してくれる。このとき生じる帰ろうという想いが、最も強く自分を護ってくれるのかもしれないけれど。

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菱田愛日作品の書評