チカラの使い道

 川に捨てられた人間の赤ちゃんが、動物たちが住むどうぶつの国に流れ着く。その赤ちゃんを、両親を山猫に食べられたタヌキのモノコが拾い、母親となって育てることを決意する。しかし、弱いモノコは、一生懸命がんばるのだけれど、自分のエサも、赤ちゃんのエサの確保もままならない。しかも、赤ちゃんは、捨てられたときの母親の言葉により、生きる気力をなくしていた。

 親による育児放棄や、弱肉強食の世界という重いテーマを、作者らしいコミカルなキャラクターで描いている。
 自分のエサも確保できないほど弱いにも拘らず、さらに弱い存在を護るべく奮闘するモノコ。強い牙と爪を持ちながら、弱いものを襲わずに生きている黒山猫のクロカギ。そして、誰よりも弱い体ながら、どんな動物とも言葉を交わせるという能力を持つ赤ちゃん。そんなキャラクターたちが暖かい関係を結んでいきます。
 強者が全てを奪う世界において、言葉が生み出す和がどこまで通用するのか。

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雷句誠作品の書評